多くの企業で総務が担当している業務の一つに車両管理があります。前任者の引き継ぎで、なんとなくやる事はわかっているけど、これであっているのか、なぜ必要なのかがよくわかっていない方も多いようです。この記事ではなぜ車両管理が必要なのか、具体的な車両管理の方法について解説します。

企業に求められる車両管理の目的は

企業では様々な業務を行います。自社のメインの事業を遂行するなら、商品を仕入れ、販売先を見つけて納品、代金を回収する、といったようにそれぞれのプロセスごとに業務があります。バックオフィス業務であれば、ヒトの管理(入社や退社に伴う各種届出など)、カネの管理(売掛金や買掛金、各種税の支払いなど)、モノの管理(デスクや携帯電話といった備品など)の業務があります。
それぞれの業務は、事業を円滑にまわしていくために必要なことはもちろん、法令の定めによって行う業務もあります。
車両管理業務は、一定の要件の基に法令で定められている部分と、モノとしてのコストと車両運行に伴うリスクを管理することを目的としています。

車両管理におけるリスク管理

車両運行にはリスクが伴います。事故による従業員の怪我や車両の損傷が起きると、代替のヒトや車両の手配が必要になります。従業員が長期間離脱せざるを得ない場合、新たに雇用を検討する必要がありますが、従業員募集にかかるコストや新人の教育コストがかかってきます。相手方の補償や自社の損害について自動車保険から保険金が支払われた場合、次年度の保険料がほとんどのケースであがります。10台以上の車両を保有している事業者が契約するフリート契約の自動車保険は、支払われた保険金の総額が次年度の保険料算出に大きくかかわってきますので、一回でも大きな事故を起こしてしまうと全体の保険料があがってしまうため、特に注意が必要です。
事故の態様によっては、事故を起こした企業に対する社会的信用低下も考えられます。近年では整備不良による事故には、社会的に厳しい目が向けられます。従業員への安全教育のほか、適切に点検、整備を実施することが企業には求められます。

何を管理するか

一口に車両管理と言っても、その管理すべき項目は多岐にわたります。企業が管理する車両の数や運用の形態によっても変わってきますので、自社にあわせた形で管理項目や管理方法を定めることが重要です。
まずは次の項目をヒントに、自社の状態を洗い出してみましょう。

1.車両の管理
* 車両の保管場所と管理方法
* 車両の維持管理
*ガソリン代や消耗品などの管理
2.従業員の管理
*安全運転教育(危険運転、飲酒運転の防止)
*従業員の勤務時間など時間の管理
*従業員の行き先、使用目的の把握
*従業員の健康管理
3.運行管理
*車両使用台帳:誰がいつ使ったかの把握
*運転日誌:従業員の運転時間を記録
*車両管理台帳への記録:車両の定期点検記録の管理
*車両の配置、稼働台数の適正化
*事故や災害時の対応マニュアル整備

安全運転管理者の選任

一定台数を超える車両を運用する企業は、法令の定めにより安全運転管理者の選任が義務づけられています。
「道路交通法施行規則」により定められた要件によると、乗車定員11人以上の自動車1台、またはその他の自動車を5台以上所有している企業は、事業所ごとに安全運転管理者1名を選任する必要があります。また20台以上の車両を使用している場合は、安全運転管理者のほか、車両20台ごとに1名の副安全運転管理者の選任が求められています。
安全運転管理者は誰でも選任できるわけではなく、資格要件が定められています。

安全運転管理者の要件

・20歳以上 (副安全運転管理者をおく場合は30歳以上)
・自動車の運転の管理に関し、2年以上の実務経験を有すること
※副安全運転管理者は20歳以上で管理経験1年以上または運転経験3年以上が対象
・過去2年以内に公安委員会から解任命令(道路交通法第74条の3)を受けていないこと
・「酒酔い・酒気帯び運転」「飲酒運転にかかわる車両・酒類等の提供・同乗」「麻薬等運転」「ひき逃げ」「過労運転」「放置駐車違反」「積載制限違反」「無免許・無資格運転」「最高速度違反」「自動車使用制限命令違反」といった交通違反をした日から2年を経過していること

また安全運転管理者および副安全運転管理者を選任した場合は、管轄する公安委員会へ届出が必要です。

安全運転管理者の義務

安全運転管理者には車両の運行計画に作成や従業員の運転適性、運転技術や知識などの把握が求められます。加えて、安全運転の確保も安全運転管理者の仕事です。
そのため、安全運転管理者の業務には安全運転教育のほか、従業員が運転をともなう業務にあたるときに免許証の不携帯がないかなど法令に違反しないように努める必要があります。
安全運転管理者の選任は運用する車両が一定台数を超えなければ義務ではありませんが、車両管理を徹底するうえでは、要件を満たさない企業でも安全運転管理者を選任するとよいでしょう。

管理規定の策定

車両管理を行うにあたり、管理規定の策定は必須です。誰がどの項目において責任を持ち、どのように管理をして記録するのか、これらを決めずして管理することはありえません。業務における車両の使い方に配慮し、どのように公平な負担で記録をつけて管理していくのかを決定しましょう。
管理項目を決める際には、目的を明確にするとよいでしょう。事故のリスクを減らしたいのであれば、定期的な安全運転講習会の受講や長時間運転をしていないかなどをチェックするなどが考えられます。
一般的には運転業務の見える化、車両稼働率の記録、安全運転の確保、整備記録に関する規定を定める事が多いようです。自社の目的に沿って項目を洗い出してみましょう。

デジタル車両管理という選択肢

管理項目を定めたら運用を始めます。多くの場合、エクセルなどで管理台帳を作成し、プリントアウトして利用します。車両点検や車両の使用記録をつけるのに、車両に置いておくことができて手軽だからです。しかし、紙による記録は手軽かもしれませんが、車両管理の目的であるリスク管理やコスト管理をすすめるには少々使い勝手が悪いと言えます。
なぜなら稼働率の分析は一回や1日ではなく、全体を俯瞰して見ることに紙による記録は向かないためです。分析のために記録をエクセルでまとめ直すなど、余計な業務が発生し時間もかかります。車両管理担当者の多くは他にも業務を抱えており、このように手間と時間がかかる業務の負担は計り知れません。この業務負荷を軽減するために、アナログでの管理だけではなくデジタル化を検討するとよいでしょう。デジタル化によって、一部の業務が自動化できたり、分析が容易になるなどメリットが多くあります。車両管理に加えて運行管理も同時にできるシステムなどもありますので、車両管理を始めるときにはぜひ検討してみてください。