デジタル式運行記録計(デジタコ)とは、自動車運転時の速度・走行時間・走行距離などの情報をメモリーカード等に記録するデジタル式の運行記録計のことです。専用チャート紙に描かれるグラフから運行状況を読み取っていた従来のアナログ式運行記録計(アナタコ)にはない様々な特長があり、ドライバーの業務管理や安全運転の向上に有効であるとして導入が進んでいます。この記事ではアナログ式とデジタル式の違い、デジタコ導入で実現できること、選び方について説明します。

デジタコとは

運行記録計という速度、走行時間、走行距離(法定三要素)を記録する装置のことで、専用チャート紙にデータを記録するアナログ式運行記録計(アナタコ)に対して、SDカードやクラウド上に記録する方式の運行記録計をデジタル式運行記録計(デジタコ)と呼びます。

デジタコが必要な車両は?

2021年現在、この運行記録計は最大積載量7トン以上または車両総重量4トン以上の事業用トラックに取り付けることが義務化されています。その目的は運転時の速度、走行時間や走行距離といった情報を記録して、適切な運行管理を行うことです。速度を記録することで道路の安全を確保や、走行時間を記録することで長時間労働の是正といった従業員(ドライバー)の権利を守ることにもつながっています。以前は、安価なアナログ式運行記録計(アナタコ)が主流でした。しかし、専用チャート紙に記録された情報を読み解くには相応の知識が必要なため、現在では簡便に利用できるデジタル式運行記録計(デジタコ)が主流となっています。

設置が義務付けられている車両に搭載できる運行記録計は国土交通省によって認定された機器であることが必要で、どの機種が認定されているのかは国土交通省のHPで確認することができます。認定を受けた機器には型式がつけられますので、導入を検討する時にはそちらがついているかを確認すると良いでしょう。

アナログ式運行記録計とデジタル式運行記録計がある

車両に設定が義務付けられている運行記録計ですが、アナログ式とデジタル式の2種類があります。アナログ式運行記録計は専用チャート紙に記録がされるもので、速度、走行距離、走行時間が分かるようになっています。その原型が開発されたのは1952年のドイツで、日本には1959年に入ってきました。1962年には運行記録計の設定が義務づけられているので、50年以上の歴史があります。

アナログ式運行記録計(アナタコ)のメリット

アナログ式運行記録計(アナタコ)のメリットは、価格です。初期費用で3万円程度から販売されています。運用にあたっては、専用チャート紙の購入も必要ですが、こちらも100枚1,000円前後と安価です。

アナログ式運行記録計(アナタコ)のデメリットは、専用チャート紙に記録された情報を読み解くのに知識が必要なことに加え、時間がかかることです。また改ざんすることもできるといわれており、正確で公平な管理をするには少し物足りない部分があります。

デジタル式運行記録計(デジタコ)のメリット

対してデジタル式運行記録計(デジタコ)のメリットは、運用のしやすさがあります。SDカードやクラウド上に法定三要素データを記録し、専用ソフトやクラウド上の管理画面をひらけばデータがキレイに見やすく表示されるため、専門的な知識がいらず、時間もアナログ式運行記録計(アナタコ)を利用した場合とくらべて大幅に短縮されます。またデジタルデータのため、アナログ式運行記録計(アナタコ)ではできない様々な機器との連携や管理できる情報が多いことも特徴です。
デジタル式運行記録計(デジタコ)のデメリットは導入に際して高額な初期費用が掛かることです。平均して15万円ほどかかるケースが多いようですが、中には10万円を切る機種も出てきています。
なお、多くの事業者にとって導入時に頭を悩ませることになるこの初期費用ですが、条件を満たせば助成金を活用することができます。国土交通省や各都道府県のトラック協会で確認できるほか、デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入によって適切な労務管理につながるという観点から厚生労働省の働き方改革推進助成金を活用できます。(2021年4月現在)

デジタル式運行記録計(デジタコ)で実現できること

多くのデジタル式運行記録計(デジタコ)では、速度、走行時間、走行距離を簡単に記録し、専用ソフトなどで読み込むことで運行日報を簡単に作成することができます。1日にどこに何時に行っていたのかを手書きあるいは手動で作成していた場合、作成に1回あたり30分かかるとすると、1か月で15時間、年間で180時間かかります。従業員が10名いると年間1,800時間です。この時間も労働時間ですが報告のためにかけている時間となり、あまり生産性の高い時間の使い方ではありません。
この点、デジタル式運行記録計(デジタコ)を利用して運行日報を作成すると、SDカードを読み込む方式でも従業員が自分で作成するよりもはるかに早く簡単に作成できるので、時間の節約につながり、無駄な残業を減らすことができます。

デジタル式運行記録計にはSDカード型と通信型がある

デジタル式運行記録計(デジタコ)は記録の保存方式がSDカード型と通信型の2種類があります。SDカード型とは、SDカードをデジタル式運行記録計(デジタコ)に挿し込んで利用するもので、多くの場合、専用にフォーマットされたSDカードを利用する必要があります。SDカードに記録された一日の運行記録は、業務終了後に専用ソフトでPCに読み出すことで日報という形で表示されます。作成された日報はPCに保存するか、印刷して台帳に保存します。
通信型の場合は、運行記録は随時クラウド上に保存されていきます。そのため、業務終了後のSDカードの読み込みが不要になります。一日の運行記録は、クラウド上の専用サイトにアクセスして確認し、必要に応じてダウンロードまたは印刷して保存します。

コストからみるSDカード型と通信型の違い

費用面でも違いがあります。SDカード型の場合は、通信型と比較すると安価です。そのため、一見するとデジタル式運行記録計(デジタコ)を導入するなら、SDカード型の方が費用面からメリットが多いと感じると思います。
ですが、SDカード型で運用する場合はその取り込みの手間も考えるべきです。SDカード型の場合にデータを読み取ることができるのは専用ソフトを利用した場合です。10人の従業員がいると10回の読み取り作業が必要になります。1名ずつ読み取り作業を行うため、同じような時間に作業が集中すると待ち時間が発生してしまい、労働時間にムダが生じます。
また専用ソフトが利用できるのはほとんどがPC1台につき1ライセンスとなっており、複数の事業所や営業所がある場合は、少なくとも事業所や営業所で各1台分のライセンスを用意しなければなりません。この費用も見逃せません。
SDカード型で利用できるSDカードはメーカー指定となっているものが多く、量販店などで販売している安価なSDカードを利用できない機種があります。SDカードは消耗品であり定期的に購入することを考えると、長い目で見るとコストがかさみます。

対して、通信型の場合はクラウド上にデータがそれぞれの車両から送られるので、読み込みにかかる時間も、待ち時間も発生しません。また通信型のデジタル式運行記録計(デジタコ)もSDカード型と同程度の価格帯の製品も増えており、初期費用で比較した場合のデメリットは小さくなってきています。

デジタル式運行記録計(デジタコ)の選び方

デジタル式運行記録計(デジタコ)を選ぶにはまず目的を定めましょう。デジタル式運行記録計(デジタコ)では速度、走行時間、走行距離(法定三要素)のほか、様々なデータを取得できます。従業員に安全運転をしてもらいたいのか、日報や月報を簡単に作ってさらに様々な自社のフォーマットに合わせていきたいのか、などを検討します。
安全運転を重視するなら、危険な運転を記録したり、通知が来るような製品を選ぶと安全運転指導に活用でき、またドライバーもよい緊張感をもって業務にあたることができると思います。自社フォーマットでの日報や月報を作成したい場合には、日報や月報のカスタマイズ機能があるかを確認します。
また選定にあたっては従業員の誰もが使いこなせるか、といった視点も大切です。せっかく高額な費用をかけて導入しても使わない機能が多数あったり、一部の従業員しか使いこなせないなどということが無いように、誰もが使いやすく導入しやすいものを選ぶことが大切です。