動態管理という言葉を聞いたことがありますか?「動態」という言葉を辞書でひくと「物事の動いている状態、また変化していく状態」とあります。物事の動きや変化を管理すること、これが動態管理ということになります。ビジネスの現場では、主に人や車両がどのように動いているか(動態)を管理する意味で使われています。動態管理とは何か、実際にどのように行えばよいのかを紹介します。

動態管理が必要な理由

企業では、なぜ人や車両の動態管理が必要なのでしょうか。人や車両の動きは自分が動いている、あるいは動かしているならばどこにいるのか、何をしているのかはわかります。けれども、他人が動いているときにどのような動きをしているかはわかりません。

例えば、商品を車両で配達するとき、顧客との約束の納品時間に15分遅れてしまったとします。自分が配達に出かけているなら、渋滞に巻き込まれてしまった、道を間違えたなどの遅れてしまった原因がわかります。でも別の担当者が配達をしたときには、15分遅れてしまったという結果しかわかりません。遅れた理由を尋ねると、「渋滞に巻き込まれた」「道を間違えた」と回答しても、本当は30分ほど喫茶店で休憩をしていたために遅れたのかもしれません。でも誰かが見ていたというのでなければ本当のところはわかりません。

このようなときに動態管理をしていれば、人や車両がどのような動きをしたかを確認でき、目的に沿った行動をしているか、寄り道をしていないかなどを確認することができます。効率よく、事業をすすめていくために動態管理は必要なのです。

動態管理のメリット

動態管理を行うと、管理者、従業員に多くのメリットがあります。特に効果が高いものを紹介します。

管理者のメリット

1.ムダな動きを削減できる
動きを管理することができれば、目的地まで効率的に移動しているかがわかります。本来ならばまっすぐに目的地まで向かうはずが、コンビニなどで長時間休憩をしている、ルートから外れた営業先へ立ち寄っているなどがわかるようになれば、余計にかかっている時間を削減できます。本来の目的地以外の営業先への立ち寄りは、一見すると外出時の時間を効果的に使っているように見えますが、その場所によっては別の目的地に向かう場合に立ち寄るほうが効率よく動けることがありえます。

2.コストを削減できる
目的地まで効率よく動くように指導できるようになれば、時間が削減できるので、従業員の残業時間を減らすことができます。車両で移動する場合、ムダな移動を禁止することでガソリン代の削減にもつながります。またコスト削減と同時に利益率のアップも期待できます。一つの業務に対する効果的な動きを動態管理で促進することは、生産性を高めることにつながるためです。

3.従業員の安全確保ができる
従業員の動きを知ることは、労働時間の把握につながります。出勤や退勤時にタイムカードなどで勤怠管理は行っていることと思いますが、動態管理を行うことで、どの業務にどれだけの時間がかかっているかを把握できます。時間を把握することで、1日の業務でどの行動が残業を生み出す結果につながっているのかがわかります。残業の原因となる行動を特定し、他の従業員に振り分ける、行動の内容を見直すことで残業を抑制することができ、従業員の健康的な働き方につながります。

従業員のメリット

従業員側からすると、動態管理は行動監視とも思えてしまい、心情的にデメリットしか感じないかもしれません。ですが管理者側と同じように従業員にも動態管理を行うことにメリットがあります。それは動態管理によって業務内容が「見える化」され、従業員自身が適切に時間を使い、効果的に業務を行っていることが管理者側にわかることです。
目的地の到着が遅れた場合でも業務をサボって休憩していたなどと疑われることがなくなり、まじめに働いている従業員にとって痛くもない腹を探られることがなくなります。また動態管理された記録を参照することで、より効果的な移動ルートを検討できて時間の削減にもつながります。

動態管理の方法

動態管理は人や車両の動きを管理することです。例えば次のような方法があります。

1.地図を用意し、出発地点から目的地までのルートを予め記入する
2.ルート上の報告地点を決め、移動時間を考慮して報告時間を決める
3.報告方法を決める(電話であればどの番号に誰にかけるか)
4.記録方法を決める(エクセルに記入するなど)
5.実行する

いかがでしょうか、この方法ではかなり手間がかかります。目的地までのルートを調べるだけでも、複数の訪問先がある場合、かなりの時間がかかってしまい、もしかするとそれだけで半日程度の業務量となるかもしれません。また車両で移動しているとき、報告を電話やメールで行うためには、安全上の問題から、駐車する必要があります。問題ない場所を確保して電話やメールで報告後、運転を再開するとなるとかなりの時間をロスしてしまいます。
そこで動態管理を行うにはシステム導入がおすすめです。動態管理システムを導入することで、時間のかかる位置の確認や報告、記録が業務を止めることなく行えます。特に車両の動態管理システムの導入は運転業務を妨げないため、導入のメリットは大きいです。

動態管理システムの仕組み

動態管理システムはいくつかありますが、前述の通り車両の動態管理システムの導入メリットが大きいことから、車両の動態管理システムの仕組みについて紹介します。
動態管理システムでは車両の位置を取得することが必要なため、大きく2つの方法で車両の位置を取得します。

1.車載器を取り付ける
動態管理システム用の車載器を取り付ける、またはドライブレコーダーやデジタコで動態管理システムに対応したものを活用します。
2.スマホやタブレットを利用する
スマホやタブレットのGPS機能を利用して、動態管理システムへアプリなどでつなぎます。

いずれもシステムを利用するために月額費用がかかります。また情報をシステムにあげるために通信が発生するため、通信費用も別途必要となります。
車載器やスマホ、タブレットから送信されたデータは、インターネット上でまとめられ、動態管理システム内で見ることができるようになります。送信される情報は運転者が送信ボタンなどを押す必要がなく、自動で集計されます。

動態管理システムの車載器

動態管理に使う車載器には、GPS機能、通信機能が備えられています。大きさや取り付け方法は様々ですが、動態管理専用のタイプでは、車両の専用ポートに取り付けるOBDタイプやシガーソケットに取り付けるシガーソケットタイプがあります。OBDタイプの車載器なら大きさはパソコンのマウスくらいです。

ドライブレコーダーやデジタコで動態管理に対応したタイプも同様にGPSが内蔵され、通信機能が備わっています。通信機能についてはオプションになっていることや、別の機器と連携させる必要がある場合もあります。なお、ドラレコやデジタコで動態管理を行う際の注意点は、どのメーカーのものでも動態管理システムにつながるわけではないということです。すでに利用しているドライブレコーダーやデジタコを活用して動態管理を行う場合は、対応しているシステムを事前によく確認しましょう。

最後に

動態管理を行うことで、管理者はコストの削減や業務の効率化をすすめることができ、従業員にも十分なメリットがあります。動態管理システムを利用すると業務日報の作成が簡単になるなど、従業員のメリットはもっと拡大します。しかし、動態管理は従業員の側からすると監視されていると感じ易いことも確かです。導入を検討する際は、メリットを十分に説明し理解を求めることが大切です。