2024年問題を控えた日本では、ドライバー不足が深刻な課題となっています。
そうした中、外国人労働者の受け入れ規制が緩和されたことで、物流業界でも外国人材の活用が注目されつつあります。本稿では、外国人ドライバー受け入れの実現可能性と課題、そして物流DXとの連携など、その全容について解説していきます。

日本の外国人労働者数の増加と新たな在留資格

まず、日本が外国人労働者の受け入れを本格化させた背景を振り返っておきましょう。
政府統計によれば、2023年6月時点の在留外国人数は約322万人と前年末比14万人増の過去最多を記録しています。

また、従来の高度人材に加え、新たに「特定技能」在留資格が創設され、2019年から単純労働分野でも受け入れが開始されました。
この新在留資格は、人手不足が深刻な14業種で認められ、建設、造船、外食などの分野で活用が進んでいます。
その後2022年に製造の3分野が統一され12業種に変更となり、2024年3月29日に「自動車運送業」「林業」「鉄道」「木材産業」が新たに「特定技能」の対象となり労働分野は16業種へと変更になりました。
2024年問題で、今後30万人以上のドライバーが不足すると言われている物流業界にとっては追い風となる予定です。

ドライバー職種での外国人活用の可能性とその課題

しかし残念ながら、今回の門戸開放がそのまま人材不足の解決策になるかというと、ことはそう簡単ではありません。
外国人材の受け入れに向けては、まだまだ様々な課題をクリアする必要があります。

まず、日本語コミュニケーション能力の確保が前提となります。
物流現場での日本語での指示の理解不足は重大な事故につながるリスクがあり、一定の運転実務経験とあわせた語学力の基準が不可欠です。
さらに、外国人材に対する文化差の理解と、受け入れ体制の整備、生活支援の体制づくりなども重要です。
こうした課題がクリアされれば、外国人ドライバーの受け入れは物流業界に大きなインパクトを与えるでしょう。
外国人労働者は、長期の滞在を前提とした人材であり、短期の単なる人手不足対策ではなく、根本的な課題解決につながるからです。
さらに、労働力の確保により、物流の効率化が進めば、業界全体の生産性向上にもつながります。

ただし、外国人ドライバーの雇用に伴う初期コストの増加は避けられません。日本語教育や受け入れ体制の整備に加え、宿舎の確保や生活サポートにもコストがかかります。
また、文化の違いによる軋轢(あつれき)や、言語のコミュニケーション課題など、リスクも存在します。
ドライバー業務も単純に「モノ」を運ぶだけではありません。付随した様々な業務を、母国語でない外国人材がどの程度まで対応できるのかは、物流業界においては未知数です。
加えて様々な国から来る外国人材が、どの程度まで日本の道路交通法や交通規則、慣習を覚えてスムーズな運送ができるかとなると想像以上のハードルが存在すると思われます。
こうしたリスクをどう回避し、コストをいかにコントロールするかが鍵となっていくことでしょう。

さらに、一旦外国人ドライバーの導入が実現した場合でも、さらなる課題が控えています。
外国人材の適正な評価と、処遇の改善などを業界全体で取り組まなければなりません。
待遇の良し悪しが、優秀な外国人材の確保に直結するためです。
団体を挙げて、グローバル人材の募集と育成、適正評価につなげていくことが重要になるでしょう。

人材不足の解決への取り組み

外国人ドライバーの受け入れについては、解決すべき課題が山積しています。
しかし一方で、物流デジタル化の動きを見れば、新たな活用シーンも見えてくるのではないでしょうか。
物流業界全体でDXが推進される中、AIやIoTなどの先進テクノロジーを活用した、より効率的な物流システムの構築が求められます。
そうしたデジタル化の動きと、外国人材の活用を相互に組み合わせることで、新たな働き方の創出が可能になるはずです。

具体的には、物流の基幹業務と付帯業務を切り分け、外国人材に適した業務を明確化していくといった対応が考えられます。
物流の中核業務である長距離運転は、日本人ドライバーが中心に担当する一方、都市内の配送業務や荷役作業などは、外国人材を活用していくといった棲み分けもあり得るでしょう。
また、グローバル人材の育成と適正な評価、活躍の場の創出にも取り組むべきです。
優秀な外国人材を確保するには、公平な評価とキャリアアップの機会を与えることが重要になります。
将来的には、グローバルで活躍できる物流人材の育成を目指し、外国人材にも門戸を開くことが求められるはずです。
このように、物流DXの推進と、外国人材の活用を上手く組み合わせることで、新たな物流のスタイルが創出できるかもしれません。

外国人材を活用するためのテクノロジーとしては、以下が考えられます。
1. 翻訳アプリ/AIによる自動翻訳
スマートフォンの翻訳アプリやAIによる自動翻訳技術を活用することで、言語の壁を低くできます。音声入力に対する即時翻訳や、マニュアル・書類の多言語化なども可能になります。

2. ウェアラブルデバイスによる作業支援
スマートグラスやヘッドセットなどのウェアラブルデバイスを使えば、視覚的な作業手順の案内や、音声による指示が可能です。
言語の違いを気にすることなく、外国人作業員を作業支援できます。

3. テレマティクスシステム/動態管理システム
車両の位置情報や運転状況などを可視化するシステムを導入すれば、ドライバーとの言語の壁に頼らずに業務管理ができます。
安全運転支援やドライバー評価、最適ルート案内などにも役立ちます。

このようなテクノロジーを物流現場に積極的に取り入れていくことで、外国人ドライバーとのコミュニケーションの質を高められるかもしれません。
特に、テレマティクスシステムは安全性や公共性の確保についても一役買うでしょう。
ドライバーの国籍に関わらず、安全運転を支援することで、事故リスクの低減にもつながるはずです。
一朝一夕には解決できない課題かもしれませんが、ロードマップを描きながら、着実に対応を進めていくことが重要なのです。

まとめ

外国人ドライバー受け入れの実現に向けては、日本語能力の確保や文化の違いへの対応、法制度の整備など、さまざまな課題が山積しています。
こうした取り組みに、当社のテレマティクスサービスもお力になれるものと思います。
KITAROでは英語版の提供も行っており、ドライバーズアプリによる音声案内についても英語でも対応可能です。
実際に国内でも弊社サービスの英語版をご利用している企業様もいらっしゃるため、これからの外国人ドライバーへの運転指示や状況確認、さらには運転評価といった面でも貢献できるものと思います。
アクシスではKITAROを通じて、今後もお客様の物流課題解決を全力でサポートしてまいります。
気になった方はぜひKITAROサービスサイトまでお問い合わせください。