2024年問題を背景に、物流業界では深刻なドライバー不足に悩まされています。人手不足と需要の増加により、物流現場では生産性の向上が喫緊の課題となっています。その中でも特に問題視されているのが、ドライバーの荷待ち時間の増加です。

ドライバーの荷待ち時間の現状と問題点

国土交通省が令和3年1月~3月にかけて調査したところ、1運行あたりの荷待ち時間は平均で1時間34分、荷待ち1回あたりの待ち時間は平均で1時間13分という結果になりました。
荷待ち時間の発生状況を1運行あたりでみると、1時間~2時間以内が32.4%と最も多く、次いで30分~1時間以内が29.5%となっているものの、3時間超の荷待ち時間もなんと9.8%ある状況でした。平成27年の調査と比較すると、2時間以上の荷待ち時間が減少傾向にあるものの、1時間以下の割合が増えていることがわかります。
同様に荷待ち時間の発生状況を荷役作業1回あたりでみると、30分~1時間以内が31.0%と最も多く、次いで30分以内が30.4%となっているものの、1回あたり3時間超の荷待ち時間も5.5%ある状況でした。平成27年の調査と比較すると、平均荷待ち時間は1時間9分から4分増加し、2時間以内に占める割合は約85%と平成27年の調査とほぼ同じ水準となりました。

国土交通省R3年度トラック輸送状況の実態調査結果(全体版)

こうした長時間の荷待ち時間は、ドライバーの身体的・精神的負担を高め、事故リスクの増大にもつながっています。さらに、荷待ち時間の増大は、物流コストの上昇や、納期遅延による顧客サービスの低下にもつながるなど、物流事業者にとって大きな経営上の問題となっています。
また一方で、荷主側からも、物流事業者に対する納期厳守や、ジャストインタイムの納品要請が強まっており、この両者のニーズのバランスを取ることが難しくなってきているのが現状です。

こうした荷待ち時間の問題を解決するためには、まずはその実態を「見える化」することが不可欠です。
具体的には、ドライバーの位置情報や、荷役作業の進捗状況などを、リアルタイムで把握・可視化することで、無駄な待ち時間を徹底的に削減することが可能となります。
また、見える化された情報を基に、配車計画の最適化や、荷主との連携強化などに取り組むことで、ドライバーの生産性向上にもつなげることができるのです。
これからの激しい競争環境の中で、物流事業者が生き残っていくためには、まずは自社の物流の見える化から始めることが鍵となるでしょう。

荷待ち時間の最適化に向けた3つのアプローチ

では、どのようにすればドライバーの荷待ち時間を減らし、物流現場の生産性向上を図ることができるのでしょうか。
ここでは考えられる具体的な3つのポイントについて説明します。

1. 動態管理システムの活用
ドライバーの荷待ち時間の最適化において、まず重要なのが動態管理システムの活用です。システムを活用することで、リアルタイムでトラックの位置情報を把握し、配車計画を最適化することができます。
ドライバーの位置情報をGPSで把握し、荷物の積み降ろしの状況も連携して管理すると、待ち時間の発生を事前に予測し、配車計画に反映させることができます。
例えば、ある配送拠点で荷待ち時間が発生している場合、遅れが見込まれるドライバーに別の配送ルートを割り振るなど、柔軟な対応が可能となります。
さらに、蓄積された配送実績データを分析することで、平時の配送ニーズの変化にも機敏に対応できるようになります。
加えて、動態管理システムにはドライバーの運転状況も記録される機能があります。運転ログの分析により、安全運転の指導や、無駄な待ち時間の発生状況の把握など、ドライバーの生産性向上にもつなげられるのです。
このように、動態管理システムの活用は、荷待ち時間の見える化と配送の最適化を両立させ、ドライバーの生産性向上に大きな効果を発揮します。物流事業者にとって、2024年問題への対応として、ぜひ検討に値する施策と言えるでしょう。

2. ロジスティクスの可視化
ドライバーの荷待ち時間を最適化するには、単にドライバーの動きを管理するだけでなく、荷役作業の効率化や、荷主との連携強化など、ロジスティクス全体の見える化にも取り組む必要があります。
倉庫や荷役現場における作業の状況を可視化することで、無駄な待ち時間削減の一助とすることができます。
実は荷待ち時間の発生有無については、荷主(運送委託者)と運送事業者間で非常に大きな乖離が見られるのです。
荷主調査では荷待ち時間が発生しているが24%/発生していないが60.5%ですが、運送事業者では荷待ち時間が発生しているが73.4%/発生していないが26.6%と逆転してしまう結果になっています。ドライバーの待機時間の実態を荷主が把握しきれていない実態が垣間見えます。
入出庫の進捗状況や作業員の稼働状況などをリアルタイムで把握し、荷待ち時間の実態を荷主とも共有することで、現状が適正なのかロジスティクス全体で判断しやすくなるのです。さらに、定期的な振り返りを行い、ロジスティクスの課題を共有しながら、継続的な改善につなげていくことも重要です。

このようにロジスティクスの見える化と、荷主との連携強化により、ドライバーの待ち時間を最小限に抑えるとともに、物流全体の生産性向上にもつなげられるのです。

3. ドライバーの生産性向上
ドライバーの荷待ち時間を最適化するためには、ドライバー自身の生産性向上にも取り組む必要があります。
ドライバーの負担を軽減し、働きやすい環境を整備することで、安全運転の確保や、顧客満足度の向上にもつなげられるのです。
具体的には、スマートフォンアプリなどのITツールを活用し、ドライバーの業務をサポートすることが効果的です。
配送ルートの最適化や、荷物の積み下ろしに関する情報共有など、ドライバーの業務を効率化するツールを提供することで、待ち時間の発生を抑制できます。
また、ドライバーの労働時間管理や、健康管理、教育・研修などにも活用することで、総合的なドライバーの生産性向上につなげられるのです。

加えて、ドライバーの待遇改善にも取り組むことが重要です。長時間労働の解消や、休憩時間の確保など、ドライバーの労働環境を改善することで、モチベーションの向上や、離職率の低下にもつなげられます。
残業代請求の時効は2020年に2年から3年に伸びました。さらに、労基法における賃金請求権の消滅時効が5年に延長されることから、残業代請求の時効も今後延長が予想されています。労働訴訟は1990年代前半に1,000件を超えてから右肩上がりを続け、現在は3,500件前後の高い水準となっています。2024年問題の影響もあり、ドライバー人材の流動性が高くなれば、従業員の労働環境と新規に向き合う企業に人材が集中し、劣悪な環境の企業は淘汰されていくことになるでしょう。
現状の見える化と生産性向上、ドライバーの労働環境改善は今すぐ進めなければならない重大な取り組みと言えるでしょう。

荷主側から見た2024年問題への対応

ここまでは運送事業者側の目線で見てきましたが、荷物を依頼する側(発荷主)・受け取る側(着荷主)から見た2024年問題への対応を見ていきましょう。
2024年問題は物流事業者だけが取り組むべき課題ではありません。
「持続可能な物流の実現に向けた検討会」では、着荷主を含む荷主企業や消費者も一緒になって、それぞれの立場で担うべき役割を再考することが必要不可欠としています。
持続可能な物流の実現のために取り組むべき施策についても、荷主企業や消費者の意識改革を1番に挙げており、経済産業省の主催するセミナーでも、物流事業者ではなく荷主側の意識改革の重要性がたびたび話にあがるほどです。

それではドライバーの荷待ち時間を減らすために、荷主側でできる対応としてはどのようなものが考えられるでしょうか。
1. 配送時間の平準化
2. 荷役作業の効率化
3. 待機スペースの確保
4. 荷主との連携強化
それぞれについて詳しく説明します。

1. 配送時間の平準化
多くの物流現場では、朝夕の時間帯に荷物の集中が見られ、ドライバーの待ち時間が長くなる傾向にあります。これを改善するためには、荷主側、特に着荷主側で配送時間の平準化に取り組む必要があります。
具体的には、配送時間枠の設定や、配送時間の分散化など、荷物の受け入れ体制を見直すことで、待ち時間の発生を抑制できます。
バース予約システムを導入している企業は、令和4年度に経済産業省が実施したアンケートでは7%にとどまっています。
事前にトラックの到着時間を予約しておくことで、運送事業者のみならず荷主側の作業時間も削減できるでしょう。

2. 荷役作業の効率化
荷役作業の非効率さも、ドライバーの待ち時間の主な要因となっています。
荷受元では、作業員の配置の最適化や、機材の導入など、荷役作業の効率化に取り組む必要があります。
さらに、作業手順の見直しや、作業員の教育・訓練の徹底など、ソフト面の改善にも注力することが重要です。
これにより、積み降ろしの所要時間を短縮し、ドライバーの待ち時間を削減できます。
生産拠点から納品先までをパレット輸送することで、フォークリフト作業を行いやすくなり荷役時間の削減に役立つでしょう。

3. 待機スペースの確保
ドライバーの待ち時間を最小限に抑えるためには、十分な待機スペースの確保も不可欠です。
駐車場の拡充や、待機スペースの設置など、物理的なスペースの確保に加えて、休憩施設の整備なども検討する必要があります。
ドライバーが快適に待機できる環境を整備することで、待ち時間の長さを感じにくくするとともに、事故リスクの低減にもつながります。

4. 複数荷主との連携強化
ドライバーの待ち時間を削減するためには、荷受元と荷主企業との連携強化が重要です。
荷主企業に対して、配送時間の平準化や、ジャストインタイムでの出荷要請の緩和など、協力を求めていく必要があります。
また、異業種企業による混載により、トラック輸送の効率化を図るといった対策も検討の余地があります。

以上のように、荷主側で取り組むべき施策は多岐にわたりますが、これらの対応を組み合わせることで、ドライバーの待ち時間の大幅な削減が期待できます。
物流業界全体で連携し、2024年問題への対応を図っていくことが重要です。

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