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改正道路交通法の施行により、令和5年4月1日から自転車利用のヘルメット着用が努力義務化されました。
努力義務ですので、ヘルメットを着用しなくても罰則はありません。ですが、「だったら着用しなくてもよい」と終わらせずに、なぜこのような法律がつくられたのかという背景をご紹介したいと思います。

道路交通法の改正点

今回改正された道路交通法条文は以下の通りです。
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道路交通法 第63条の11
第1項
自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。

第2項
自転車の運転者は、他人を当該自転車に乗車させるときは、当該他人に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。

第3項
児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児が自転車を運転するときは、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。
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簡単にまとめると、自分だけではなく、他人や児童にも乗車用ヘルメットをかぶせましょう、ということです。
それまでの道路交通法では、13歳未満の子供が乗車する場合ヘルメットの着用に努める必要がありました。
今回は範囲が拡大し、自転車を運転するすべての人に努力義務が課せられることになります。

自転車の安全利用五則

今回の法改正の経緯として、交通事故数に占める自転車事故の割合増加があります。
交通事故自体は年々減少傾向ですが、自転車事故に関していえば高止まりが続いています。
事故を起こさないことはもちろん、事故が発生した際のリスク低減からもヘルメットを着用することが有効です。

今回の法改正に先立ち、2022年11月1日に制定された「自転車安全利用五則」ではヘルメット着用とあわせて5つのルールが定められています。
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  1. 車道が原則、左側を通行
    歩道は例外、歩行者を優先
  2. 交差点では信号と一時停止を守って、安全確認
  3. 夜間はライトを点灯
  4. 飲酒運転は禁止
  5. ヘルメットを着用

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これは自転車の交通ルールが一般に周知されておらず、事故の発生が増加している傾向を鑑みたものです。
自転車は身近な移動手段でありますが、一方で講習を受けずに運転できることから、歩行者や車両の運転者にとって非常に危険な存在になりやすいものです。
公共の場で全員が安全に気持ちよく過ごすために、今後も自転車の交通ルールは厳しくなっていくことが予想されます。
現在でも、重大な事故につながりかねない悪質な違反については、刑事罰の対象となる交通切符をきられることもあります。
自転車の運転者に限らず、歩行者や車の運転者も交通ルールをしっかり知ることで事故を減らしていきたいですね。

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ヘルメット装着の普及率

4月1日の改正道路交通法施行に先立ち行われた民間のアンケート調査では、自転車を運転する人のうち、約8割でヘルメットを着用していない場合があると回答されています。
また、警察庁のまとめでは、全国13の都府県で着用率を調べたところ、全体の4%にとどまっていることがわかりました(2022年2月~3月)。
今後ルールの周知などで自転車用ヘルメットの着用率は上がっていくと思われますが、まだまだ世間一般の流れとして共通認識には至っていないのが現状のようです。
ちなみに自転車用ヘルメットがダサいとされたのも今は昔。おしゃれなものから安全性の高いものまで、さまざまなタイプが店舗・ネットを問わず販売されています。
自転車を運転される方は、この機会に是非色々とお調べください。

ヘルメット着用で、事故に遭った時にどれくらい違うの?

ここ10年の自転車乗用中の死者数は緩やかな下降傾向となっており、令和4年では339人です。
うちヘルメット着用者の死者数は14人、非着用者の死者数は325人となっています。全体の95%以上がヘルメット非着用者となり、かつヘルメット非着用時の死傷者に占める致死率は、着用時に比べて約2.6倍と大きな開きがあります。
年齢や速度など、個別の事案によって考慮すべき事柄は多数あるかと思いますが、やはりヘルメットの着用が運転者の命を守ることにつながる傾向が見て取れます。

自転車による交通事故と年齢別の傾向

警察庁交通局の「令和4年度における交通事故の発生状況について」によると、令和4年(2022年)中の交通事故は300,839件で、うち自転車が当事者となった交通事故は69,985件と全体の23.3%程度を占めております。
平成28年までは全事故に占める割合は減少傾向でしたが、それ以降毎年およそ1%弱のペースで増加に転じています。
令和4年中は自転車運転者に対する指導取り締まりとして、約132万件の指導警告票が交付され、約2万5,000件の交通違反が検挙されました。

また、令和4年の自転車乗用中の年齢層別死者数の推移では、4歳以下が1人、5~9歳が2人、10~14歳が2人、15~19歳が9人と、若年層が全体の4.1%を占めています。
しかし、死者数のうちのヘルメット着用率が小学生は25.0%、中学生は39.1%となっており、若年層の場合、頭部の保護だけでは間に合わないような重大な事故が多いと推測されます。
一方65歳以上は令和4年の自転車乗用中の年齢層別死者数が220人と全体の約65%を占めています。死者数のうちのヘルメット着用率は3.6%となっていることから、高齢者の場合、頭部の保護をしっかりと行うことで命にかかわる事故を防ぐことができると推測されます。

まとめ

日常の便利な移動手段として高い人気を誇る自転車ですが、道路交通法では軽車両に位置付けられており、あくまでも車の一種です。
自転車乗車時の死者のうち、法令違反を犯していた割合は7割を超える結果となっていますから、交通ルールにのっとり安全運転を心掛けることが、自分や他人の命を守ることにつながります。
この機会にヘルメット着用に限らず、交通ルールの再確認を進めてみましょう。

出典:警察庁HP
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/bicycle/info.html
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/toubuhogo.html
警視庁HP
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/bicycle/menu/helmet.html
内閣府HP
https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/bicycle/bicycle_r04.html