運行管理というトラックを使用している運送業で必要なものと思いがちですが、実は運行管理は、車を使うすべての企業が取り組むべき課題の一つです。製品やサービスの提供に車を利用している企業において車を効率よく運行させることができれば、より多くの製品やサービスを提供でき、収益向上につながるためです。特に事業所が多い、使用する車両の数が多い企業にとって運行管理システムを導入するメリットが多くあります。運送業ではない一般企業にとって、業務の効率化に運行管理システムがどのように役立つのかをご紹介します。

運行管理とは

そもそも運行管理業務は、自動車運送事業者(運送業者やタクシーやバスなどの旅客事業者)が運行管理者を選任して行うものです。道路運送法第23条、貨物自動車運送事業法第18条で定められており、運行管理者は安全かつ確実な自動車輸送を遂行するための管理業務をするように求められています。

運行管理者の業務内容

運行管理者に求められる業務は幅広く、運転者に対して指導監督を行う、円滑に運行できるように乗務割(いわゆるシフト)を作成することもあります。
・事業用自動車の運転者の乗務割の作成(乗務指示・調整)
・休憩・睡眠施設の保守管理
・運転者の指導及び監督
・点呼の実施(運転者の疲労・健康状態等の把握と安全運行の指示)
・補助者の指導及び監督
・事業者への助言 など

運行管理者の資格

運行管理者として選任されるには、一定の資格要件を満たす必要があります。要件を満たす方法は2つあり、国家試験に合格するか、一定の実務経験を積んで国土交通大臣の認定する講習を5回以上受講することのどちらかです。

一般企業における運行管理者

一般企業では運行管理者の選任は求められていませんが、近いものとして安全運転管理者があります。道路交通法施行規則によって安全運転管理者を選任する要件が定められており、乗車定員11人以上の自動車1台またはその他の自動車を5台以上所有している企業は、事業所ごとに安全運転管理者1名を選任する必要があります。

安全運転管理者の業務は、運転者に対する安全教育や運転適性の把握、運行計画の作成など運行管理者と似通った業務内容となっています。

運行管理を行う意味

一般企業には法令での運行管理者の選任は求められていません。しかし、一般企業においても運行管理を行うことにはメリットがあります。運行管理者に求められている乗務割の作成は事業に支障がないように車両の割り振りを決めるものですが、一般企業に置き換えると製品の配達や営業先訪問に支障がでない、事業活動に支障がないように車両を確保することです。運転者への指導・監督は、一般企業においても事故を起こさないようにするために必要です。

運行管理システムを選ぶわけ

運行管理への取り組みは、一般企業においても重要です。しかし一般企業では運行管理者の選任が法令で定められていない以上、運行管理における専門知識や実務経験のある人材を確保することは非常に難しいものです。そこで一般企業では運行管理システムを活用することで、人材確保の課題を解決することができます。

運行管理システムでできること

運行管理システムには多くの機能があります。大きく分けると「車の運行そのものにかかる機能」と「車の運行に付随する事務にかかる機能」があります。

車の運行そのものにかかる機能

運行計画作成や車の利用状況の管理など車を企業が使用するにあたって必要な業務を運行管理システムで代用できます。個々の運転業務における所要時間の把握やルートの確認など、人間の手で行うと膨大な手間と時間が必要な業務も運行管理システムならば瞬時に手間なくこなしてくれます。これにより運転者は本来業務に集中できる時間を生み出すことができます。
運行管理システムに事故や渋滞情報を取り込み、業務に活用することもできます。運行管理システムは車の現在地を把握することが可能なので、事故や渋滞情報を把握したらルート変更などの指示を運転者に出すことができ、時間を無駄にしません。

車の運行に付随する事務にかかる機能

車を運行することで発生する事務作業の軽減も運行管理システムで実現できます。例えば、運転の実走行時間をまとめて集計し、営業担当が1回の訪問にかけている時間から面談に使っている時間と移動に使っている時間を検証することができます。面談の時間や売上と比較して移動時間があまりにも長ければ、訪問の方法を見直したほうがいいとわかります。
また運行管理システムでは報告書の作成も支援してくれるため、運転者が報告書作成にかけていた時間の節約ができます。

運行管理システムの種類

運行管理システムは多くの機能がありますが、製品によって使える機能は異なります。大きく分けると3つのタイプがあり、自社に合った運行管理システムを選ぶことが重要です。

オールインワンタイプ

オールインワンタイプの運行管理システムは、基本的な機能が初めから一つにまとめられて利用できるタイプです。運行状況を把握できることはもちろん、事務作業軽減に役立つ機能も十分に利用でき、一元的に管理することが可能です。

機能チョイスタイプ

運行管理システムで利用できるものから、自社に必要な機能を選択できるタイプです。自社では利用しない機能が搭載されていると割高に感じることもありますが、必要な機能や予算にあわせて導入すれば無駄がありません。

機能特化タイプ

特定の機能のみに絞った運行管理システムです。機能が絞られているため低価格で導入が可能です。使える機能が自社の求めるものと合致する場合は、おすすめです。

運行管理システムを業務に活用する

運行管理システムを一般企業で導入する一番の目的は、業務の効率化を図ることです。運行管理システムを使い事務作業を軽減することのほか、車の運行状況を把握することで適正な台数を確保しているか、運行ルートは適切かなどの評価をすることができるようになります。また安全運転をしているかという運転者の運転適性なども評価することが可能です。

運行管理システム導入で期待できる効果

残業時間の削減
運行管理システムの報告書作成機能を利用すると、車を使った業務の日報作成が容易になります。1日の業務終了後に作成していた日報作成にかかる時間を大幅に短縮できるため、残業時間を抑制することができます。

行動の見直し
運行管理システムには動態管理機能があります。車がどこを通って目的地に何時についたのか、現在はどこにいるのかがわかる機能です。この機能によりどのようなルートで目的地に行ったのかがわかるため、不要な立ち寄りをしているなどといった行動が可視化されます。複数の目的地を訪問した場合は、立ち寄った順序なども行動の可視化により明らかになるため、効率よく訪問できたかを評価することができます。効率よく回れていないことがわかったときは、運転者に対してフィードバックすることで行動を見直すことができます。

車の稼働状況の把握
業務に利用する車の台数が適正かどうかを、車の稼働状況を確認すると判断できます。車の稼働状況に偏りがあったなら、なぜ偏ってしまうのかの検証を加えることで、車両の追加が必要または車両が余っているという判断ができ、車の維持費や保険料の削減ができます。

自動車保険料の削減
運行管理システムで管理できる車の動きの一つに、危険運転があります。危険運転とは、事故とならないまでも事故につながるような危険をともなう急ブレーキ、急加速、急ハンドルを指します。運行管理システムは危険運転を記録する機能がありますので、危険運転の記録を確認したら該当する運転者に対して安全運転をするように指導を行います。指導を継続していくと運転者の意識改革ができ、事故を減らすことができるので、結果的に自動車保険料の削減につながります。

まとめ

運行管理システムを導入すると、運送業だけではなく一般企業においても業務時間の短縮を図れる、保険料など経費削減が期待できます。運行管理システムには様々な製品、サービスがあるため、導入を検討する場合は自社のニーズがなにかをしっかりと洗い出すことが重要です。この記事を参考に自社が期待する業務効率化や目指す経費の削減項目をしっかりと検討してみてください。